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秋葉原通り魔・・

 投稿者:七紀  投稿日:2008年 7月 2日(水)17時08分22秒
返信・引用
  「うっわ・・秋葉で通り魔出たんだって。つかさ、あんたも気をつけなさいよ。」
テレビの前でチョコ菓子を食べるかがみ。その隣には、つかさもいる。
「ええっ!どうしよわたし死んじゃうの?」
家でも天然を出すつかさ。もう慣れてしまったのでツッコミはしないが。
「それにしても怖いわね。無造作にしたんでしょ?」
かがみ深い溜息をついた。
そして次の日。

「うおーい、かがみんやーい。」
登校中、こなたに会った。相変わらずのアホ毛を立てながら。
「あっこなちゃん。」
つかさはこなたに駆け寄って行った。
「こなた。おはよー。」
その後つかさが何もないところで転ぶのは言うまでもないが。
「昨日あれがくさくってさ~」
なんて話しながら、教室に入った。
「あ、そういやかがみん、数学のノート見せて。」
ほいっと右手を差し出すこなた。
「またあんたは・・。少し位自分でやるようにしたら?」
それでもしぶしぶ見せるのがかがみなのだ。
「皆さんおはようございます。」
教室に入ってきたみゆきがぺこりと頭を下げると、
「おはよーみゆきさん。」
「ゆきちゃんおはよう。」
「みゆき、遅かったわね。」
次々に挨拶が続く。
「ええ、少しばかり遅れてしまいまして。」
「そういやぁかがみんロローシュの新刊読んだ?読んでないなら買ったほうがいいよ~」
「あたしは別にいいわよっ。あんたじゃないんだし。」
かがみはそっぽを向いた。
「へぇ~?かがみんロローシュ格好いいって言ってなかったっけ?」
こなたに図星をつかれてかがみは肩をすくめ、赤くなる。
「うるさいわね!あたしは別に・・」
「ほえ?こなちゃん、その人どんな人?」
つかさは興味津々な顔でこなたを見る。
「んーとね、この人この人!」
こなたは持っていた雑誌を広げ、つかさに見せる。
「わぁ~わたしこのメガネの男の人がいいなぁ。」
つかさはキャラに指をさす。
「えっ?つかさ以外ね・・。」
「えっ?だめかな~?」

朝の日常を話していると、2年生組が教室の前へいる。

「あれっ?ゆーちゃんたちー入っていいよー!」
こなたが一年生組に手招きをする。
「うんっ、ありがとうお姉ちゃん!」
「失礼します・・」
「ありがとうございますっす。」

ゆたか、みなみ、ひよりが教室へ入ってくると、何か違和感を感じた。
何かがおかしい。

「んあれ?パティはいないの?」
こなたがパティがいないのに気付く。
「うん・・お姉ちゃん、それがね・。」
「何?パトリシアさん風邪でも引いたの?」
かがみがゆたかに近寄る。
「パティちゃん今日学校来てなくてね・・風邪ならいいけど、お姉ちゃんならバイト一緒だし何か知ってるかなーと思って・・・。」
ゆたかが落ち込むように顔を下げて話した。

「んー・・そういやパティ昨日バイト来なかったよ。何かあったのかな。」
こなたは昨日パティが来なかったのをそこまで気にはしていなかった。

「やっぱり風邪か何かかな・・?今日おみまいでも行ってみようかな?」
ゆたかは人差し指を顎に付けた。

「・・でもゆたか、家の場所が・・。」
みなみがぽつりと言った。
「あううっ!そうだった!」
落ち込むゆたかを慰めるみなみ。でももっと落ち込んでいたのは・・

―ひよりだった。

ひよりはゆたか、みなみとは友達だが、この二人ほどの仲ではなかった。
だから、親友のパティがいなければ悲しいものなのだ。

「おーい、お前ら席つけー。ホームルーム始まるでー」
黒井先生が教室へ入ってくる。
「わわっ!お姉ちゃん家でねっ!」
あわてて3人は教室へと帰った。
しばらくして・・放課後になった。

「・・ゆたかちゃんとみなみちゃんに悪かったかなぁ・・でも・・」
ひよりは電車の中、心の中で思った。

ひよりは、パティの家を知っていることを黙っていた。
そして、その家に向かってる途中なのである。
ひよりは理由を知っていた。パティが休む理由を。

「○○駅ー○○駅ーお降りの方は・・」

そう声が聞こえると、ひよりは電車を出た。
しかし、降りる人々に巻き込まれた。
「うわああっ!?あっ・・あのあたしあっち行きたいんですけどーっ!」
いつもの貧乏くじを引いてしまう目には、一人の女子が。

「Oh・・?ひよりデスか?」

パティだった。

「うう・・パティちゃん・・今行くとこだったんだよ・・。」
ぷるぷると腕をふるわしパティに手をのばす。
「ついでデス!ワタシノ家来マスカ?」
普段と変わらないいつもの明るいテンションだった。
「うん・・そうするね。」

二人はパティの家へと向かった。

「お邪魔しまーす。」
「コッチの部屋デスよ。」

パティに部屋を案内される。されるまま歩いていく。
「座って待っテテくだサイね?」

座って待っていると、同人誌やコスプレの衣装がたくさん回りにあった。

3分ほどすると、パティはジュースを持ってきた。
「わっ、ありがとね。」
コップを受け取ると、ひよりは一口いただく。

しばらくの沈黙が続いた。

そして口を先に開いたのは・・パティだった。
「・・ひよりはワタシがナゼ休んだかわかりマスよね?」
ひよりはびくっとしてジュースをこぼしそうになった。

「・・う、うん・・。」
ひよりは小さくコクっと呟いた。

「・・あのニュース、とてもビックリしまシタ・・。」
「・・秋葉原殺人事件のこと?」
ひよりはそれ以上話してほしくなかった。
しかし話は続いた。

「・・ワタシ、とても悲しいデス・・」
パティの顔を見ると、きれいな青目から涙が流れていた。


泣き続けるパティの顔を見て、ひよりは黙っていることしか出来なかった。
ひよりはただ願うことしか出来なかった。

「もうこんなことが起きないで・・」と。
 
 

かがみの日記

 投稿者:テオ  投稿日:2008年 6月19日(木)16時34分35秒
返信・引用
   つかさの様子がおかしい。
 そう感じたのは、ついこの間のことだ。
 私が何を言っても上の空で。ある時、携帯電話をプッシュする瞬間に何故か顔を赤らめてしまっていた。一言で言えば挙動不審なのだ。
 最近ではそれが目に見えて多くなってきた。
 まさかとは思うが、これは――
 乙女の勘とやらが私にもあるなら、つかさは今“恋”をしている。それも片想いでなく、交際中な雰囲気。
 それが当たっているかどうかの確信はないが……、私はなんとなく気になってしまったのでつかさを観察してみることにした。これは決して、先を越されているのか焦って確認するわけではない。ただ、姉として心配だからだ。そう、ただそれだけ……。

「つかさぁ、ちょっといい?」
 部屋を軽くノックしてからそっと覗いてみる。
 つかさは私から呼ばれたのにも気付いていない様子で、必死に便箋に文字を書き連ねている。人の手紙を見るのも悪いので、後からちょんと指で背筋をなぞってみた。
「ひゃあッ!!」
 髪の毛を逆立たせて、つかさは椅子から転げ落ちる。
 手を貸してやって起き上がると、ぎこちない笑顔を私に向け、
「どど、どうしたの。お姉ちゃん?」
 明らかにきょどった感じで訊いてきた。
 もはや、確定か?
 私がちらっと便箋に目を向けると、
「だ、だめえ! 見ちゃだめだよぅッ!」
 机に覆い被さる形で、つかさは私の視界から手紙を隠した。その照れ具合が我が妹ながら可愛らしい。今まで男子が寄ってこなかったのが不思議なくらいだ。
「うーん、なんでもいいけどさ、つかさ。もう一時よ。明日起きられるの?」
「え? あっ、ほんとだ。もう寝なきゃだね。ごめんね、お姉ちゃん。心配かけて」
「別にいいわよ。何を頑張ってるのか知らないけど、一生懸命ねえ」
「えへへ、うん! だって、こうしてあげると喜ぶみたいだから……」
「へえ――ねえ、つかさ。もしかして、それってさ」
 うん? と小首を傾げるつかさ。
 私はつい意地悪な笑みを浮かべて、
「男の子にあげるの? もしかして……告白? それとももう彼氏出来た??」
 からかってみた。
 つかさはたっぷり数十秒も体内時間を止めて、そして、
「ちちちち、違うよぅ!!!? お姉ちゃん、そんなんじゃないよ……ッ!!」
 と、全力で否定された。
 渇いた笑いを残してその場を立ち去る私。
 なんでかな……。嬉しいような哀しいような。何とも言えない微妙な感覚が私の中に沸き上がった。


 翌日早朝。
 用事があると、つかさよりも早くに家を出て、学校に着いたら自分のクラスに学生鞄を置き、いつものように隣のクラスに足を運んだ。
 壁掛け時計を見たら時針が七の字を回るか回らないかの頃合いだ。いつもよりもかなり早い。
 教室にはまだ数人しかいなかった。その数人もそれぞれ談笑していて、(私がよく来るせいでもあるけど)特に私に注意を向けていない。好都合だった。
「おはよっ、みゆき。ちょっといい?」
「はい?」
 この時間は流石にこなたもまだらしく、ここの知り合いはみゆきだけだ。
 フローラルなとてもいい香りのする髪を揺らせながら、みゆきは私に微笑んで訊いた。
 嗚呼、可愛いな。チクショウ!
「おはようございます、かがみさん。……今日は早いですね。どうかしたんですか?」
「そんなことはどうでもいいのよ。少し時間くれる? 相談したいことがあるんだけど……」
 きょろきょろと周囲の様子をうかがって、誰も聴き耳を立てていないか確認した後に、私はみゆきに事の詳細を語った。
「――まあ。それが本当だとしたら……」
 一瞬表情を曇らせて、
「非常に喜ばしいことだと思いますよ。おめでとうございます、かがみさんっ」
「いや、私に言われても困るんだけどね……」
 そうでした、と愛らしく人差し指を立てるみゆき。
「で、さ。それについて心配なのよね。色々と」
「心配?」
 ため息をついて、私は隠すことなく悩みの本音を言った。
「だってさ。姉の私が言うのも何だけど、あの子、ちょっと抜けてるじゃない? 天然ていうかなんていうか。だからさ、もし付き合ってる彼氏が悪い奴でもころっと騙されちゃいそうで……うん。ぶちゃけ、不安なのよね」
 相槌を打ちながら、みゆきはこくんと頷いて、
「姉が妹を心配する気持ち、よく判ります」
 目を閉じて、誰かを思い浮かべているようにして彼女は語る。
「私も……みなみさんが同じような状況だったら、きっとそうだと思います。私でよければ喜んでご協力いたしますよ」
「さすがみゆき――。やっぱ持つべき者は理解ある友達よねえ」
 感激に思わず涙が出そうになった。目頭が熱い。
「それでね、具体的な話なんだけど。私じゃあの子に警戒されるだろうから。みゆきにはあの子が誰と付き合ってるのか、調べて欲し――」
「なにが?」
 そこで第三者の声が飛んできた。
「誰と誰が付き合ってるとか聞こえたけど……何々、恋バナ? みゆきさん? もしかして、かがみん??」
 目をきらきらさせて、私の頭一つ分低いアホ毛の友が飛びついてきた。
 今こいつにばれるのはまずい。いや、直感で、何か非常によくない気がする。
「ななっ、なんでもないって! ほら、一年の頃の委員会の話に花咲かせていただけ。ねえ、みゆき?」
「え、えぇ」
 冷や汗ながらごまかそうとするが、この女はそんなことでは引き下がらない。
「むー。私だけハブですか……。いいじゃんいいじゃん、私も混ぜてよぅ! 私たちって、親友でしょ。ねえ、みゆきさん?」
 そこでみゆきに振るか。
 そんなところがこなたらしい。
「ええと、ですね。ちょっと人のプライバシーに触れるものですので、えと……あ、つかささん!」
 ここで元凶が来たか。
 つかさは、いつもと同じ人の良さそうな笑顔でこなたとみゆきにおはようと返した。
 でも、みゆき。ナイスな反らし方だ。
「あはは、ごめんねぇ、お姉ちゃん。宿題に手間取っててちょっと遅くなちゃった。はい、これノート」
「まったく、今度からちゃんと自分でしなさいよね」
 上手いことつかさも空気を読んでくれた。
 この調子でこなたには知られないようにしなきゃ――。
「あとね、これお姉ちゃんのお弁当。今日なんか急いでたみたいだけど、忘れてたでしょ?」
「ああ、悪いわね。ごめんごめん」
 ――なんだろ。
 受け取った瞬間、違和感を感じた。
 つかさをよく見ると、目にクマができていた。そう言えば、昨夜も私より遅くまで起きていたような……。
「今日のは気合い入れて作ったんだよ! 期待してていいからねっ」
 おーおー。男の子が相手だったら、飛び跳ねるほど嬉しい台詞なんだろなあ。
 と、そんな場合じゃなかった。ちらっとみゆきに見やった。
 みゆきはにっこり笑って首を縦に振った。
「かがみん、やっぱ何か隠し事してるでしょ……?」
 じーっとこなたから視線。しかし、丁度いいところでホームルームの予鈴が鳴って、
「あ、じゃあもう戻らなきゃ! またねぇ」
 若干わざとらしすぎる気もしたが、これでいい。
 ぶーぶー言っているこなたに振り返ることなく、私は教室へと戻った。
 あとは結果を待つのみだ。


 飛んで明日の放課後。
 みゆきが予定通り調べてきたらしく、現状を報告。すると思いきや、苦虫を噛みつぶしたような顔で「ついてきてください」と一言。
 言われたとおり後に続いていくと、何故か学校の外へ。
「ちょっとちょっと! どこ行くわけ?」
「えーっとですね、駅です。こればかりは目で見て貰うしかなさそうですし」
 言っていることがよく分からない。
 口では説明できない? え、それってかなりやばいところ? つかさの彼氏ってやっぱり――
 勝手な想像が膨らんでいき、なんだか無性に腹が立ってきた。
「もし、もしそうだったら……」
「何か言いましたか?」
「別に」
 いけないいけない。思ったことが言葉に出てきてしまう。
 なんとか感情を抑えて、友人の誘導のもと辿り着いたのは――
「はぁ? ここってこなたのバイト先じゃない!?」
 通りで見慣れた風景ばかり続くはずだ。
 放課後のこの時間、こなたはもうバイトに入ったのだろうか? 気になって中を覗いて見たが、その姿は見当たらなかった。
「こっちです」
 店の裏口『関係者以外立ち入り禁止』のワッペンが貼ってある扉をみゆきは躊躇無く開く。
「なな、何してんのよ、あんたはッ!?」
「はあ。そう申されましても」
「まったくこなたじゃないんだから。ここは立ち入り禁止って書いてあったでしょ?」
「一応、関係者(こなた)から承諾を得てますし、中をご覧頂ければ判るかと――」
「いい、いらっしゃいませぇ~!!」
 やけに不慣れな店員さんの声が出迎えた。
 すごく聞き覚えのあるような。というより、産まれて今方、一緒に育ってきて声を聞き間違えるはずはない。
「つかさっ! な、なにやってんのよ!?」
「あ、かがみん、いらしゃ~」
 だらけたもう一人の店員も出迎える。
 煌びやかなゲームキャラの衣装に身を包んだ、ちんちくりんな親友が、
「よくここを知ってたね。って、みゆきさんが教えてくれたのかあ。昨日は驚いたよ。初見でここの扉を見抜かれたのは初めてだよ」
 事の真相がだんだんとはっきりしてきた。
 こなたとつかさ、その他数名のスタッフがいかにもな男共と楽しく和気藹々と話やゲームを楽しんでいる。店の内装も表を遙かに凌駕して美少女ゲームの学園に出てきそうな仕様となっていた。
 頭が痛い。
「こなた。あんた、よくも人の妹をぉぉぉぉっ!!!?」
 気付けば、考えるより先にこなたの胸ぐらを掴んでいた。つかさが制止に入る。
「お姉ちゃん、違うの。これはね、これはね!」
「つかさはちょっと黙ってて。こなた、やっていいことと悪いことの区別もつかないの!? つかさがあんた色に染まったら、どうしてくれるのよ?」
「まあ、それはそれで…………萌え?」
 ぶちっと何かが切れたような音がして、私はこなたの頭に水平チョップを喰らわせた。
「痛たたたた……ッ! かがみん、ちょっとは加減して」
「うるさい!! みゆきの見た方が早いって言ったのはこのことだったのね。あー、もう! つかさ、帰るわよ?」
 つかさの手を引っ張って無理矢理帰ろうとしたが、
「ちょっと待ってください! かがみさん、ちょっとは人の話も聞くものですよ」
 みゆきに行く手をふさがれた。目が真剣だったので、思わずたじろいでしまった。
「泉さん」
「あー、うん。かがみ、黙っててごめん。昨日の朝、様子がおかしかったのってこのことだったんだね」
 こほんとこなたが咳払い。
「確かに、つかさに頼んでここで代理のシフト入って貰うように頼んだのは私だよ。それは悪かった……。でもね、それだけが理由じゃないんだ」
「あのね、お姉ちゃん」
 こなたに促されて、おずおずと前に出るつかさ。両手の指をクロスして、恥じらいながら言葉を紡いだ。
「手伝うようになって暫くしてから、私、お店を上がる前になってお客さんの男の子から……告白されちゃったの」
 つかさの頬がさらに朱に染まる。釣られて、私も赤くなってしまった。
「私、男の子に告白されたのって初めてで戸惑って……。その時、ちゃんとお返事できなかったの。だから、今も保留っていうか。だからね!!」

 からんからん

 店の入り口にある鐘が鳴った。
 オーソドックスな詰め襟を着た男子学生が、手を左を左胸に当てながら入店してきた。
 見た目からして、高校生か中学生か。こういう店に中学生は入れないはずだから多分高校生だろう。それも私たちの年代より年下の。一年生ではないかと推測する。
「あ…………ッ!」
 少年はつかさを見つけて目があったと同時に目線を下げた。誰が見ても判るくらい、バカ正直に身体が緊張で硬直してしまっている。
「あの人がそうなの。でも……今日こそは、ちゃんと言うからっ」
 店内はBGMさえも飲み込むほどに静寂に包まれていた。
 お客も店員も、誰一人として物音を立てない。
 そんな中、つかさの足音だけが響き、少年へと歩み寄っていく。
「あ、あの――っ!」
「うん」
 少年が言いかけた時、つかさが目を伏せた。
 閉じた目をゆっくり開いて、
「ありがとう。あなたの気持ち、すっごい嬉しかった……!」
 こなたが生唾を飲み込む。
 みゆきもかたずを呑んで見守っていた。
 私は――眩しすぎる妹の笑顔を直視できずに、少年の方ばかりに目がいってしまう。
「でも…………」
 頭を九十度に下げ、つかさはきっぱりはっきりと言い切った。
「ごめんなさいッ!!」
 呆然と立ち尽くす少年。
 と、そんな彼の手を握り、つかさはやはり眩しい微笑みを浮かべて、
「私、まだそういうの判んなくて。ええと、もう高3なのに遅いよね、うん! 自分でも判ってるよ!! それに、一目惚れってことはまだ私のことちゃんと知らないんだよね。それじゃあ、駄目だよ。私もあなたのこと判らないまま付き合うのって嫌だもん」
「おぉ、この展開は……ッ!」
 耐えきれずこなたがKY発言を言いかけるが、さすがはみゆき。私が手を出す前にこなたの口元を遮った。
(む、みゆきさん。苦しいって!)
(す、すみません。今、いいところなので)
(みゆきも正直すぎるわね。ってか、あんたはもっと自重しなさい!)
 小声で私たちが話す間、再び無言の刻が訪れる。
「お友達からってのは駄目かな? 私の友達も紹介するし、ほら。あそこにいるのが――」
 こなただったら「名言キターっ!」とか言う場面なんだろう。
 しかし、リアルでこんな発言をかますとは。我が妹ながら、末恐ろしい。
「いえ」
 だが、少年は。周囲の思惑とは裏腹に首を横に振った。
 その表情はどこか満足げで、見た目では判断できないくらい潔さで、つかさにこう言った。
「ありがとうございました! それと……ごめんなさいっ」
 振り返って、店を去っていった。
「あ」
 呼び止めようとしたつかさ。
 これ以上彼女を悩ませたくない。迷惑かけたくない。そんな思いなのか、彼は決して振り返ることはなかった。
 歩いた道の先々に、小さな水滴が光って見える。
「そっか……」
 感嘆の声を私は漏らす。
 一人の少年が、そして一人の少女が今、確かに成長した瞬間なのだ。
 最愛の妹を今すぐにでも抱擁したい衝動に駆られ――
「いやあ、我が親友ながらいいもの見せてくれますなあ。ところで、かがみんや。これ、今日で抜けるつかさの代わりのかがみん用の制服なんだけど……」
 こなたのKYで、すぐに萎えた。
 今になってようやく全てを理解した。
 諸悪の根源はやはりこいつ(こなた)なのだと。
 わなわなと震えながら、私は拳を頭上に掲げた。
「アホかぁぁぁぁっ!!」




終わり
 

ある日のチェリー

 投稿者:テオ  投稿日:2008年 6月17日(火)23時34分30秒
返信・引用
   私の名前はチェリー。犬だ。いつも怒ったような顔をしているが、別に何かに怒りを感じているわけではない、生まれつきだ。
 「みなみ」という名のショートヘアで長身の女の子が私のご主人様だ。他にもご亭主やその奥さんなども私の主人に当たるが、それはまた後日紹介しよう。

 よく晴れた日。人間達の言葉で言えば“日曜”に当たる今日、ご主人がご学友を連れてきた。
 一人は華奢で小さな女の子、名前は「ゆたか」という子でご主人の一番の親友だそうだ。こう言っては失礼だが、ご主人と同学年にはとても見えない。大人と子どもほどの違いがある。
 もう一人はゆたか嬢から「田村さん」と呼ばれる少女。黒髪ロングでメガネをかけている。今気付いたんだが、三人とも胸がないな。中でもご主人がダントツにない!(失礼)
 そして大抵、今に通される前に廊下で私とすれ違う。
 二人の第一声はこうだ。
「わ、チェリーちゃん。久しぶり~」
「ひ……ッ!」
 ひっとはなんだ。失礼な。
 ゆたか嬢に撫でられながら、私は少しむっとした。が、それも仕方ないのは判っている。前回彼女らがこの家に遊びに来た時にそうとう噛んだりじゃれたりしすぎたからだ。
 やりたくてやったのではない。何故かと言われると、上手く答えることが出来ないのだが、身体が勝手に動いてしまったのだ。
 田村嬢は悪い人ではない。ご主人にも優しいし、最初は私にもフレンドリーに接しようとしてくれた。
 でも、なんでかな……。彼女を見ているとどうしても狩猟本能をくすぐられて全身が居ても立ってもいられなくなる。
 現に、今だって。
「アヒィィィィーーーーーッ!? だ、だめっす。左腕だけは。左腕だけはあぁぁぁぁぁっ!!」
 気付いたらゆたか嬢の腕を離れ、彼女に突進してしまっている。
 ご主人が制止しようとするが、如何せん止まらない。
「やめてやめて!!ホント、そこ弱いから、あたし……」
「こ、こらっ……」
「田村さぁーーん!」
「ひええぇぇぇ!!」
 やめられない止まらないとはまさにこのことだ。
 本能は制御なんか出来ない。
 散々蹴ったり噛んだり転がしたり擽ったりした後、ようやく私も我に返った。
 田村嬢は虚ろな目のままぴくぴく痙攣してしまっている。やりすぎたかな……。
 ゆたか嬢の手を借りて、今へと引きずられていく田村嬢を見送りながら、私も悪かったと思いついていったら、ご主人からもの凄い怒気のこもった目で動きを止められ、
「エサ抜くよ?」
 やってしまった……。
 その場から一歩も動けぬ私を置いて、三人は居間へ。扉は固くぴっしり閉ざされた。


 数時間後――
 ご主人がご学友二人を玄関まで見送る。
 付いてくるなと言われるかと思ったが、意外にもご主人は何も言わない。
 別れ際にゆたか嬢がまた私の頭に小さな手を乗せ、
「ばいばい、またね!」
 無垢な笑顔でそう言った。
 これも不思議なことに、ゆたか嬢には田村嬢のように何かが沸きあがることは皆無だ。というより、それをやってしまえば何かとてつもなく恐ろしいことが起こるような……それこそエサ抜きではすまないような身の危険が私をそうさせているのかもしれない。
「えっと……その」
 さっきのこともあってか気まずい。やっぱり私は見送らない方がよかったのではないだろうか。
 そんなことを考えて目を背けていた私に、彼女は屈んでゆたか嬢同様に手のひらを軽く乗せ、
「さっきはごめんね。何にもしてないのに、怖がちゃって……。もう気にしてないから。また今度来た時遊ぼうね」
 撫でながら、ぎこちなく微笑んだ。
 激震が走った。
 犬なのに、涙腺がこれ以上ないくらいに緩む。彼女は私を許してくれたばかりか、自分も悪かった、また遊ぼうねとまで言ってくれたのだ。
 さすがはご主人のご学友。感服するほどに、このお方は“いい人”だ。
 感激のあまり、私は飛び跳ねた。この人へ少しでも謝罪と感謝の念を込めてハグしたかったのだ。
「え、あ、ちょっとちょっと……っ!?」
 が、勢いが付きすぎたんだろう。結果として彼女を押し倒す形となり、「痛っ」と田村嬢は小さく悲鳴を上げた。
「私、男の人にも押し倒されたこと無いのに……って、ちょっと待つッス!くすぐったいくすぐったい!!め、メガネはやめ……っ!」
 無我夢中で彼女の顔面を舐め続けた。
「はわわわ。チェリーちゃん。そろそろやめといた方が……」
 ゆたか嬢があぅあぅと慌てふためいて、ふと背後から殺気が。
「チェリー……」
 悪寒が走った。
 背後から私を羽交い締めにするご主人。表情は見えないがもの凄く怒っているのだけは判る。
「エサ抜きって……言ったよね?」
 心臓が破裂しそうなぐらい鼓動している。後を振り返りたくない。普段怒らない人が怒ると、こうも怖いものだと実感した。
 二人がなんとか私を弁護しようとご主人に説得をしているが無駄だろう。
 ご主人は二人を手で制し、
「いい。これは私の責任……。ちゃんと躾けなかったから。田村さん、ごめん……」
 ハンドタオルを田村嬢に手渡して、ご主人はひたすら謝った。
 田村嬢もいいよいいよと、苦笑いで応じていたが、それではご主人の気が済まないらしく何かお詫びをしないとと尚も言い続ける。
 結局は田村嬢が折れて、今度学校で昼ご飯を奢って貰うことで話が付いた。
 二人が帰った後、ご主人は私に向き直り、空気をも凍らせるような冷たい視線で、
「二人に免じて、今日だけはエサ抜きは勘弁して上げる。でももし次に、こんなことしたら――」
 それだけ言い残し、去っていった。
 ――流石に……自重しよう。
 そう心に誓う私であった。




終わり
 

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